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住宅省エネ計算の仕様基準について

仕様基準とは

仕様基準とは2025年から運用が開始される住宅の省エネルギー基準適合義務化に向け、

その評価基準となる省エネルギー性能の計算方法の一つです。

住宅の省エネルギー性能計算の方法には、「標準計算」と「仕様基準」があります。

「標準計算」は計算ソフトやエクセルシートなどを使い、部位ごとの熱貫流率や面積もそれぞれ計算していく精緻な方法で

作業量は多めですが、正確な数値を求めることが可能です。

 

一方の「仕様基準」では標準計算で煩雑であった部位ごとの面積は計算せず、エクセルやツールも使用しません。

一次エネルギー消費量性能についても簡便なチェック項目のみで適合確認ができるというものです。

 

「仕様基準」にはさらに「省エネ基準用」と「誘導基準用」とがあります。

部位ごとの熱抵抗値や使用する設備の性能などで誘導基準の方が高いレベルを要求されます。

 

 

 

 

仕様基準の運用

国土交通省からはガイドブックが公開されていて、基本的にこちらのシートを活用する形になります。

 

 

また、PDFに直接入力できる最終のチェックリストはこちらからダウンロードできます。

断熱材は熱抵抗値であるR値を、窓は熱貫流率であるU値を記入するのでお間違いなく。

 

 

断熱材については部位の熱抵抗値が基準よりも大きいこと。開口部については部位の熱貫流率と日射取得率が基準より小さいこと、

設備機器は条件を満たしているかをチェックしていきます。

 

並行して、確認申請用の図面にそれぞれの仕様やシートでチェックした熱抵抗値等の数値、開口部の仕様、

設備の仕様などを記載し、併せて確認申請時の設計図書として提出します。

 

仕様基準のメリット3つ

<その1>適合判定を受けなくて良い

一つは適合判定を受けなくて良いことです。

「標準計算」の場合、確認申請の前に建築物エネルギー消費性能判定機関(いわゆる第三者認証機関)の適合審査を受け、

適合判定通知書を建築確認申請機関に提出する必要がありますが、

「仕様基準」の方は省エネ適判を受ける必要はなく、確認申請と一体の確認となります。

 

 

<その2>認定資料の一部として使える

もうひとつは住宅性能評価、BELS、長期優良住宅、認定低炭素住宅の認定に資料の一部として活用ができるという点です。

但し、住宅ローン減税を受けるには省エネ基準への適合が必要です。

住宅省エネルギー性能証明書についてはこちらの記事もご参照くださいませ。

 

 

<その3>外皮の面積計算不要

三つめは外皮の面積計算が不要であること。

例えば同じ仕様で複数建築をする分譲メーカーさんや規格型の住宅を手掛けられる会社さんにとって、

仕様が同一であれば毎回計算する手間を大幅に削れることになります。

注文住宅にしても、1件ごとに面積を拾わなくて良く、且つエクセル等ツールへの入力作業など含め

かなりの工数を短縮できる事になり、そのメリットはかなり大きいでしょう。

 

仕様基準のデメリット

実は仕様基準には少々微妙な点があります。確かに外皮計算をしなくて良いので簡単そうに思えるのですが、

特に誘導基準においては全ての部位、設備で平均的に高レベルをキープする必要があるという点です。

 

例えば、エアコン。省エネ基準のシートでは(い)と(ろ)のエアコンがOKで(は)はNG

これが誘導基準になるとOKなのは性能の高い(い)だけです。

 

同様にエコキュートでは省エネ基準でJIS効率2.9が誘導基準では3.3以上で、

且つヘッダー配管、節湯水栓、高断熱浴槽まで必須条件になってしまいます。

省エネ基準 誘導基準
エアコン (い)又は(ろ) (い)のみ
エコキュート JIS2.9 JIS 3.3、ヘッダー、節湯、高断熱浴槽

標準計算の場合、エアコンが(は)であっても、他の部分でリカバーはできて、合計でBEIをクリアする例は結構あります。

(熱交換換気を使う、照明の多灯分散や人感センサーを採用など)

 

外皮については熱抵抗値縛りで簡易で運用可能なのですが、一次エネについては簡易にしてしまうと誘導基準であるBEI 0.9(等級5)を

クリアできないことが出てくるのでしょう。エアコンにしろ、給湯器にしろここだけハードルが高いです。

 

こうなると、外皮は充分誘導基準以上のレベルにあるけれど、設備が基準を超えないので、適判を避けるために

省エネ基準で確認申請するケースが出てくるのではないでしょうか。

もしそうなるなら、本末転倒な気がします。

 

もうひとつ、太陽光発電などの再生可能エネルギーについては「仕様基準」では入力欄もなく評価に載ってこないです。

太陽光発電が関係する認定低炭素の再エネ部分やZEHの評価などにも使えないということになります。

 

仕様基準とWebプログラムの併用

前述のような「仕様基準」の一エネ部分に関しての解決策があります。

つまり、外皮は仕様基準で、一エネ計算をWebプログラムでの詳細計算でという「仕様・計算併用」の運用もOKなのです。

 

これによりエアコンが(は)のように部分的に弱い設備があっても救済が可能になります。

但し、この場合適合判定が必要になりますので折角の仕様基準の大きなメリットである、「適判不要」の恩恵がなくなってしまいます。

 

また、BELSは別として長期優良や認定低炭素の場合一エネの等級はそもそも6(BEI 0.8)ですし、

実質太陽光も必要なのでWebプログラムでの詳細計算は必須でしょう。

 

「仕様基準」は住宅省エネルギー証明書には使えるので、冒頭の通り、分譲住宅や規格住宅で適判を受けずに省エネ基準はクリアし、

住宅ローン減税は受けるけれど補助金は取らないというケースで運用されるのではないでしょうか。(ややこしい)

 

一次エネルギー消費量計算についてはこちらの記事もご覧くださいませ。

 

 

まとめ

  • 「仕様基準」は外皮計算不要、適判不要のチェック方式です。
  • 簡易でありながら、各種認定の一部にも使える方式。
  • 誘導基準の場合、比較的高い平均点を求められる。
  • 仕様基準の運用の中心は分譲住宅や規格住宅でしょう。

以上、「仕様基準」についての解説でした。

誘導基準オーバーレベルなら、はじめから標準計算で適合判定を受けるスキームにする方が、

後々補助金やZEH対応などでよっぽどスムースです。


計算方法がいまいちわからない、仕様をどうするか考えあぐねている、認定や補助金の最新情報を知りたい、など

ご相談させていただいております。良かったらどうぞ。

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