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RC造戸建住宅の省エネ計算

 

省エネ基準への適合義務がスタートし、基本的に全ての建築物において省エネ基準への適合を求められるようになりました。

RC造戸建て住宅も例外ではなく、適合義務があります。

RC造戸建住宅には一般的な木造の住宅と違った特性があり、省エネ計算には多少の困難を伴います。

今回はそのようなRC造戸建住宅の省エネ計算のポイントを解説していきます。

目次

  • 省エネ計算のおさらい
  • 外皮性能の評価(標準計算と仕様基準)
  • 一次エネルギー消費量の評価(標準計算と仕様基準)
  • 評価方法について
  • 確認申請と省エネ適合判定
  • ラフ設計→省エネ計算→実施設計
  • RC造戸建住宅の特性と課題
  • 窓の評価
  • 適合判定に必要なこと

省エネ計算のおさらい

省エネ計算には①外皮性能②一次エネルギー消費量計算の2種類があり、さらにそれぞれ性能基準と仕様基準とがあります。

外皮性能の評価(標準計算と仕様基準)

性能基準とはいわゆる標準計算のことで外皮面積を計算し、各部位の熱貫流率を求め、

熱損失量の合計を外皮面積全体で除して外皮平均熱貫流率(UA値)を求め、基準適合/不適合の判断をします。

尚、RC造の場合、熱橋の熱損失も計算に加える必要があり、その点で木造住宅と異なります。

 

一方で仕様基準では外皮面積を計算することはせず、躯体各部位の熱貫流率(U値)か熱抵抗値(R値)

窓の熱貫流率(U値)と日射遮蔽の仕様で基準値を満たしているか判定をします。

一次エネルギー消費量計算の評価(標準計算と仕様基準)

一次エネルギー消費量計算における性能基準はいわゆる標準計算のことで、暖冷房・換気など設備の

仕様を入力し、Webプログラムを用いて詳細に計算をする方法です。

 

結果として一次エネルギー消費量の削減率1以下(等級4)かどうかで基準適合/不適合の判断をします。

 

一方の仕様基準は使用する設備が基準に合致しているかどうかで判定をします。

例えば冷暖房は(は)以上のエアコン、給湯はエコフィール、エコジョーズ、エコキュート

照明は全てLEDなど。

 

Webプログラム一次エネルギー消費量計算の画面。

仕様基準の場合上記のように「仕様基準により外皮性能を評価する」にチェック。→ 計算結果のUA値は0.87W/㎡k(6地域の場合)で評価されます。

評価方法について

外皮性能と一次エネルギー消費量のそれぞれに標準計算ルートと仕様基準ルートがあります。

以下に挙げる4つの組み合わせの中から選択をして評価することになります。

①どちらも標準 ②どちらも仕様 ③たすき掛け ④たすき掛け
外皮 標準計算 仕様基準 標準計算 仕様基準
一次エネ 標準計算 仕様基準 仕様基準 標準計算

①②は従来からあった評価方法ですが、2023年10月から③の外皮は仕様ルートで、

一次エネは標準計算でといういわゆる「たすきがけ」が認められるようになりました。

 

3つの評価方法のうち②の両方仕様基準の場合のみ建築確認申請の際、省エネ適合判定は不要です。

①と③は適合判定が必要です。

 

RC造一戸建て住宅の場合、特に大開口を多用するなどで損失が大きい傾向にあり、

外皮を標準計算で計算するとまともに数値が出てこないケースも散見されます。

 

そのような場合に、たすき掛け(外皮を仕様基準で一次エネを標準計算)が有効です。

少なくとも外皮を仕様基準で評価出来れば業務の大幅な効率化が可能となります。

 

確認申請と省エネ適合判定

省エネ性能の適合判定は基本的に国交省の登録機関である第三者認証機関が行います。

設計図書の他、申請書、設計内容説明書、省エネ計算書などを揃えて適合判定申請を行います。

 

申請を受け、機関では省エネ計算の結果数値基準を満たしているか、計算自体が妥当か、

計算に間違いがないかなどを審査し、設計者との3~4回の質疑応答を経て適合判定をし、

合格ならば適合判定通知書を発行します。

 

確認申請時に省エネ適合判定が必要となる(確認申請先が適合判定先と同じ場合は同時で可)

ことから適合判定を受ける時間を考慮したスケジューリングが必要です。

 

確認申請では、申請時に省エネ適判通知書を同時に添えて申請をするとスムーズに手続きが進みます。

いくつかの省エネ適判免除を除き、省エネ適合していることが建築許可を得る条件となりますので、

少なくとも確認申請後すみやかに提出したいところです。

RC戸建住宅の特性と課題

RC戸建住宅が一般多岐な木造住宅と違う点は「熱橋」の計算が必要になるところです。

RC造ではコンクリートの躯体が断熱層を貫通する箇所が熱橋となります。

 

各取り合い部で生じる熱橋による熱損失は、熱橋の長さ×線熱貫流率×温度差で求めます。

仕様基準においては熱橋部の断熱補強が必ず必要になります。

窓の評価

RC住宅であるということは多くの場合、大きな窓を出来るだけ設けたいのが本音ではないでしょうか。

カーテンウォール等規格品ではなく造作窓の場合、数値資料がありませんので、国土交通省の技術資料か

U値、η値の数値根拠を求めることが必要となります。

 

窓のU値については①部位別熱貫流率表から求める②簡易計算式で求めるの2通りがあります。

①部位別熱貫流率表

 

②簡易計算方式

 

日射熱取得率η値は下記表などで求められます。

※表はいずれも「住宅の省エネルギー基準と評価方法2024」より抜粋

適合判定に必要なこと

省エネ義務化以前は、「ラフ設計→省エネ検討→実施設計」の流れで問題ありませんでした。

2025年4月省エネ適合が義務になると、仕様決定後に省エネ計算をした結果、

数値が未達だった場合に、再度仕様の検討に戻らなければなりません。

 

仕様や設備の再検討が積算や工程スケジュールに影響してしまいます。

ラフ設計の早い段階から省エネ計算をスタートさせることができれば、基準適合に必要な断熱や窓の仕様を

把握した上で設計と積算をし、その後の段取りをスムーズに進めることができます。

 

まとめ

  • 省エネ計算には標準計算と仕様基準を組み合わせたたすき掛けがある
  • RC造戸建住宅には熱橋の熱損失を計算に加える必要がある
  • 造作窓などの評価は技術資料から参照する
  • 適合判定までの段取りを合理的に見直すことが業務の効率化に

いかがでしたでしょうか。

RC造戸建住宅の省エネ適判はなかなか複雑で、キャッチアップが大変です。

よかったら是非ご相談くださいませ。

 

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