こどもみらい住宅支援事業が始まっていますね。
シミュレーションをしていて気になったことがあり、そのことを書きます。
こどもみらい住宅支援事業の概要
こどもみらい住宅支援事業(以下、こどもみらいと略)は
子育て世代の住宅取得後押しと、住宅の省エネ推進対策がひとつになった施策です。
補助金を受給するには、
①18歳以下の子供がいること
②夫婦のうちどちらかが39歳以下であること
が条件で、住宅の省エネルギー性能によって補助金額が変わります。
等級4クリア | 60万円 |
長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定 | 80万円 |
ZEH、 ZEH Ready、Neary ZEH、ZEH Orientedなど | 100万円 |
100万円のカテゴリーは必ずしもZEHでなくともOKなのですが、
断熱等級5且つ一次エネ等級6が要件となり、一次エネのBEI0.8がネックになりそう。
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こどもみらい住宅事業について
こどもみらい住宅という補助金がある? はい、昨年のグリーン住宅ポイントに変わる補助金 と言っていいものです。中身をご説明しますね。 こどもみらい住宅支援事業とは 目的と概要は以下の通りです。 「子育て ...
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傾向としては、昨年のグリーン住宅ポイントから、性能に応じて助成金額に差を
設ける方向になっており、今回もその流れを踏襲していると言えるでしょう。
断熱性能等級6・7と一次エネ消費量等級6について
こどもみらいが始まる少し前に、国交省からリリースになった文書が2つあります。
ひとつめは断熱性能等級について。
「現状の等級4(6地域→0.87W)の上に等級5(6地域、UA値≦0.6)を
一次エネルギー消費量等級5(BEI≦0.9)の上に等級6(BEI≦0.8)を創設する。」
文書名 -省エネ上位等級
もうひとつは、「ZEH性能を上回る等級案とエネルギー消費量」というタイトル。
こちらは「断熱等級5のさらに上に等級6(G2相当)等級7(G3相当)を設けよう」
というものです。
文書名 -等級6・7
等級6・7についてはこちらの記事をご参照ください。
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温熱等級6・7とは?住宅省エネ義務化との関連は?
断熱性能等級におけるZEH水準を上回る等級6・7が設定される!? 『脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ基準の見直しについて』というタイトル で国土交通省・環境省・経済産業省の3省合同会議が随 ...
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2050年カーボンゼロ政策に向け、住宅の省エネもいよいよこのレベルに突入していきます。
G3なかなかのハードルですね。
HEAT20 G3の意味
HEAT20は、体感温度で住宅の断熱性能を定める主旨でグレードごとの体感温度
を決めてそれをキープできる断熱性能を確保しましょうというスタンスですね。
例えばH28基準(=等級4)なら冬期、間欠暖房で概ね8℃を下回らない、G1なら
その温度が10℃、G2ならば13℃と行った具合です。(3~7地域の場合)
もちろん断熱グレードが上がるほど、体感温度は上がります。
2021年の設計ガイドブックの中でG3グレード(15℃を下回らない)
について表記しています。
HEAT20設計ガイドブック2021 正しい住宅断熱化の作法
今回の国交省の「等級6・7」は基本的にHEAT20のG2・G3のUA値をなぞっています。
昨今、僕の周りの工務店さん・設計事務所さんはG2が当面の目標であり、
できることならG3をという流れになったように見受けられました。
こどもみらいもZEH推し
こどもみらいに戻りますと、ZEHが100万円で長期優良が80万円です。
ZEHは外皮性能強化による削減と再生エネルギーによる創出で
消費エネルギーをゼロにしましょうという主旨ですね。
この外皮と創エネの合わせ技の割合については規定がなく、外皮で50%、
太陽光発電で50%でも外皮で20%、太陽光で80%でもどちらでも良いです。
つまり、外皮でG1そこそこのレベル(概ね削減率は30%以下でしょう)であっても、
太陽光発電を沢山搭載すれば、理論上ZEHは成立するということです。
ここが僕が以前からどうもZEHがう〜んとなる最大の理由でもあった訳です。
今、シミュレーションしているのもまさにこのケースで、現状G1オーバーであり、
さて、G2・G3にするには断熱や窓をどうすれば良いかと考察するのですが、
こどもみらいを目の前にすると、
A)断熱強化してG2・G3試案(こどもみらいは低炭素か性能向上で対応)
B)断熱はG1のままでZEHシミュレーションする試案
の両方を出すことになります。
G2・G3へのモチベーションが見出しづらい・・・。
6地域でG1は0.56Wです。屋根200mm、壁100mm、樹脂トリプルLow-E、
床XPS60mmくらいのオーダーでおそらくクリアできるでしょう。
断熱性能はG1そこそこのままで、100万円補助金出るからそれで太陽光
載せましょう、となっても無理はないよなと思う訳です。
ZEHはUA値が低くともなんとかなる
「G1ZEH住宅」は電気代は安く、エネルギーの削減も太陽光発電で問題はないけれど、
冬期間の体感温度は10℃での相変わらず、温熱的に貧相な住宅です。
欧米では、外皮で頑張ることが基本で太陽光はおまけ、あるいは別という考え方です。
外皮を良くすることが大前提で、もちろん冬期間の室温も担保されます。
住宅の"断熱基準義務化"に一票
建築物省エネ法ですから、住宅の省エネルギー基準という名称なのは理解できます。
スタートが地球温暖化防止だから、住宅においても相応のCO2排出削減が求められ、
それを定める法律は「省エネ基準」という文脈ですね。
住宅の省エネに太陽光発電を持ち込まれてから、話がややこしくなった気がします。
かつて、外皮性能を高めれば「高断熱住宅」、設備性能を高めれば「省エネ住宅」
と呼ばれてきた。外皮と設備は、住む人の快適性・利便性に直接の影響を与える
「必須アイテム」である。一方でPVは快適性・利便性に直接影響しない。
よって「オプション扱い」が本来適当なはず。しかしゼロ・エネルギーという
目標は、PVをあたかも住宅の必須アイテムのように見せる効果がある。
引用:東京大学 前教授 エコハウスのウソ 増補改訂版 P357
「寒いZEH住宅」を生み出さないためにも、
「住宅の省エネルギー基準」義務化ではなく、
「住宅の断熱基準」を義務化とすればいいのに、と思う次第です。