ZEHになりうるPV容量をどう決めるか
太陽光発電を検討する際、これまでは初期投資予算や屋根面積やランニングコストの
シミュレーション(ペイバック年数など)で決めていたと思います。
ところがZEHを視野に入れるとその決め方ではまずい場合も出てきます。
今日はその辺のお話
ZEHかどうかはZEH計算が必要
その建物がZEHになるかどうかの判断は最終的にZEH計算が必要です。
そしてZEH計算に必要な数値は以下の通り
・UA値
・一次エネルギー消費量
・太陽光発電のシステム容量
言い方を変えると、これらの数値がそれぞれ、その建物がZEHかどうかを決める要素になるということです。
ZEHとは建物の外皮性能と一次エネルギー消費量と創エネ(太陽光発電かコージェネレーション)の収支がゼロになることです。
例えば外皮性能やエネルギー消費量がギリギリだった場合、
ZEH到達のためには太陽光発電のシステム容量で頑張る必要が出てきます。
逆にPVをあまり載せられない場合、外皮性能で頑張らないといけないですね。
これ、外皮はそこそこでも太陽光発電を目一杯搭載することができれば、
数値上ZEHは達成可能だということも言える訳です。
もちろん、PVのみに片寄るあまり、肝心の外皮性能がおざなりでは決して快適な住環境と
は言えないのは言うまでもありませんね。
直近の各種制度においては、外皮性能は最低限確保し(6地域でZEH強化基準UA値は0.6W)
尚且つエネルギー消費量も基準値を20%下回ることが要件になってきています。
太陽光発電のパフォーマンス
そして太陽光発電はその設置各度、方位、地域によって出力が変わる訳で、
「どのくらいの外皮性能ならZEHになるか」
や
「UA値何WでPVを何kW搭載すればZEHになるか」
という話は意味をなさず、
1棟1棟計算をしてどうなるかをシミュレーションしなければなりません。
もし、外皮性能とエネルギー消費量をそれ以上上げられないとなった時、ZEHにするために
必要なPVのシステム容量は計算で求めた上で、それに見合った量を搭載しなければ
ZEHにはならないということになります。
つまり、外皮性能が目一杯の場合、ZEHかどうかはPV容量に依存することになります。
HEAT20との関係でもない
外皮性能について例えば6地域におけるHEAT20G2はUA値0.46なので、シンプルに0.46以下になればG2レベルということになりますが、
「G2レベルの高性能住宅なら、なりゆきで4kWくらい載せればZEHになるっしょ」
的な根拠のない設計も意味をなしません。
あくまでもUA値、一次エネ消費量、PV容量があってはじめてZEHです。
ここで実際の例をご紹介します。
6地域のある住宅で、屋根セルロースファイバー300mm
壁ネオマフォーム80+40の120mm、基礎ビーズポリ100mm、窓樹脂トリプル0.86W
でUA値0.33Wでした。前述の通りHEAT20のUA値基準ではG2レベルの住宅です。
PVについては6kWでZEH達成です。
ところが、仕様変更で壁の付加断熱が難しくなり、PVも極力減らしたいとのこと。
壁内85mmのネオマでどうなるか、且つZEH達成できるレベルでPVをどこまで減らせるか
を計算してみます。
まず壁ネオマ85mmに変えたところ、UA値が0.38になりPVは6.25kWでZEHクリアです。
また、ZEHのままPVを減らそうとすると外皮性能を上げることになります。
以下の表のような相関図ができました。
UA値 |
ネオマフォーム厚さ |
壁U値 |
必要PV容量 |
|
従前 |
0.33 |
120mm(80+40) |
0.203W |
6kW |
壁100 |
0.36 |
100mm |
0.307 |
6.15kW |
壁85 |
0.38 |
85mm |
0.352 |
6.25kW |
UA値が良くなればなるほど、PV容量は少なくなっていく。
この建物ははじめから6地域のG2基準である0.46を下回っているのでいずれにしろ
G2住宅なのですが、PVを6kW以上載せることができないとZEHにはなりません。
PVを節約しようとすると・・・
さらに試算を進めたのが下図です。
PV容量を少しでも減らすのに必要なUA値を探りました。
徐々にPV容量を減らしていくと、UA値が下がっていきます。
0.26は6地域でのG3基準です。
この住宅の場合(方位が真南ではなく西に少し振れています)G3であっても
ZEHにするには5.65kWのPVが必要ということがわかりました。
こうなるとやはり壁の付加断熱がマストとなり、当初の仕様変更(壁を厚くしたくない)の
コンセプトと矛盾を生じることとなり、非現実的です。
UA値 |
PV容量 |
0.3 |
5.85 |
0.27 |
5.74 |
0.26 |
5.65 |
という訳で、ZEHを目指す場合のPV容量選定については
UA値や一次エネも加味して考えることが必要であり、なかなか簡単ではないことが
おわかりいただけたと思います。
まとめ
・ZEHを目指すならPV容量を簡単に決められない。
・ZEHかどうかは①UA値②一次エネルギー消費量③PV容量で決まる。
・「外皮がそこそこでもPVで頑張れば良い」は通用しない。
・HEAT20G2、G3であってもZEHになるかどうかはPV容量による。
・UA値とPV容量には相関関係があるけれど、現実的かどうかは別。
以上、PV容量とZEHについて考えてみました。
「バランスの良いZEH」みたいなものがあるなら、
諸条件を慎重に加味したシミュレーションが大事ですね。
もちろん、数値だけではない躯体表面温度や体感温度、それらがもたらす
良さなども加味しなければいけません、それはまた別の機会に。