「パネルヒーター、こことここ無くして再プランお願いします。」
まだ駆け出しの頃、住宅会社の担当さんから、僕が言われた言葉です。
7~8台くらいあるうちの2~3台を減らしてコストを下げようというものです。
「本当に削ってしまっていいのか。」
「寒い思いをするのは建主さんなのに・・・」
そんな思いを抱え、上司と相談するものの、受注を落とすわけにいかないという結論になり、
悶々としながら、縮小プランを持参します。
もちろん、「パネルヒーターを削って」と言った住宅会社の人の気持ちも、わかっていました。
建主さんと打ち合わせをしていくと、様々な要望が出てきます。
「家事動線とリンクした作り付けの大型収納が欲しい!」
「キッチンはアイランド型で天板は人工大理石でタッチレス水栓で!」
「家族の雰囲気を感じつつ、プライバシーを確保できる書斎が欲しい!」
苦労してようやく受注までこぎつけたお客様です。
要望はなるべく叶えてあげたい、というかほとんどマストで実現しないとシャレにならない。
そして必ず予算は足りません。
そこで担当さん、積算見積もりとにらめっこをして気が付きます。
「あれっ、この暖房設備えらい高いなぁ、少し削っても大丈夫なんじゃない?」
で、冒頭の「パネルヒーター削ってよ」発言につながります。
そして、当時の僕はパネルヒーターを削らずに営業さんもお客様も満足できる解決策を
持ち合わせていませんでした。
「どうしたら、お客様の要望を叶えつつ、最適な温熱環境をつくることができるだろう?」
「営業さんが困らずにお客様に予算を確保してもらえるプレゼンってどんなものだろう?」
「自分も営業さんもお客様もみんな満足できる空間はどうしたら実現できるだろう?」
考えて様々な試行錯誤をしてきました。
正直、手痛い失敗も一度や二度ではありません(泣)
そのうち、「こうすればうまくいく」という方法がだんだんわかってきました。
答えはほとんどの場合、『住宅の断熱仕様も一緒に考える』ことでした。
断熱性能を変えないまま、暖房を削るのはNGです。
かといって断熱性能を上げれば設備は縮小できるけど建築コストは上がる・・・。
別々に考えると相入れないのですが、一緒に考えて計画することで
断熱と暖房が(建築と設備が)バランスするポイントを見出すことができまます。
そこから、普通の設備設計をやめて、必ず詳細な温熱計算をするようになりました。
その上で、暖房設備設計をし、断熱性能と設備設計のバランスを探る作業をはじめました。
いっぱい売りたい、熱計算に自信がない(それまでの自分も含め)設備屋やメーカーは
『安全率』という魔法の言葉を使って、無駄に多くの機器を導入しようとします。
安全率を見る大雑把な設備設計ではなく、計算と結果の検証に基づく、
いわば根拠のある『ギリギリの機種選定』が徐々にできるようになっていきます。
だいたいにおいて、「弱い断熱に大きな設備」で良いことは一つもなく、
「強い断熱にミニマムな設備」が良いに決まっています。
ゆえに、断熱の強化をご提案することもあり、どの材料でどの厚みならちょうど良いか、
断熱の結露リスクや施工方法の確認、窓とのコストバランス、流通もご相談したりします。
また、時には「メリットをどうお伝えするか」や「対外的にどうアウトプットするか」といった
マーケティング的な要素も、一緒に考えることで良い結果を得られるようなケースも出てきました。
温熱環境の良さを強みにして差別化、集客し成約していく『温熱マーケティング』です。
そうして出来上がった住宅は、以下のような特徴を持ちます。
- 「省エネルギー基準」よりもはるかに高いレベルの断熱性能
- ランニングコストとCo2排出量が少ない
- もちろん意匠や素材、間取りなども十分吟味されている
- デザインも使い心地も居心地もコストパフォーマンスにも優れたもの
- お客様の満足度が非常に高い
僕はその後、独立させていただき、膨大な数のシミュレーションと経験を積み重ねてきました。
今ならあの時の営業さんも、お客様も、そして自分自身をも救うことができます。
テンプラスとは temperature(温度)と plus(加える)を組み合わせた言葉です。
「ひとりでも多くの人に、温かく心地よい環境で幸せになってほしい。」
という思いを込めて会社設立の時に考えました。
そして、「ひとりでも多くの人」には住宅の作り手である全ての関係者も含まれると考えています。
作り手が幸せじゃないと良い家はできないと思うから。
「建築と設備の最適化」を実現することで、住まい手も作り手も満足できる温熱環境をつくる。
それがテンプラスのできる最大の仕事だと考えています。
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住宅の省エネ計算サービス 住宅の省エネ計算を承ります。 外皮性能(UA値)計算と一次エネルギー消費量計算が基本のパッケージとなります。 こんな方におすすめ 省エネの適合判定が必要。 HEAT20のどの ...
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